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グイド・レーニ『ルクレティア』 国立西洋美術館の至宝

寝台に、ひとりの女性が身を起こしている。
上半身は裸。
臙脂色の天蓋の中、眩いばかりの肉の白さを鎮めるかのように、乱れた敷妙(シーツ)が背中と下半身を覆っている。
だが、その柔らかな慰撫を捨て去るためか、嫋(たお)やかに内に曲げた左手は、敷妙をつまんで肩から滑り落とそうとしている。
胸元には嵐の前の静けさが漂い、乳房は慄(おのの)き、固く引き締まっている。
逞しく発達した右腕は、その乳房と腹の前を交叉し、それに続く右手は、寝台に置かれた華奢な短剣の上に重ねられた。
切れ味を試したのか、短剣の刃先はあるかなきかの微かな朱(あけ)に濡れている。
柄頭の金珠と、薬指の金の指輪が響き合う。

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映画『シングルマン』 トム・フォードの美学

2010年に公開された、トム・フォード初監督映画『シングルマン』を、あらためて観賞した。
何度観ても、ため息しか出ない。
始まりから終わりまで、爪先から頭まで、スクリーンの端から端まで、完璧にスタイリングされている。
近年様々な映画で注目を集めるコリン・ファースは、本作でヴェネチア国際映画祭・最優秀主演男優賞を受賞した。
個人的にも生涯ベスト10に入っている作品なのだが、評価を流し読みすると「ゲイ映画」だの「ストーリーがない」だのといった理由でけなされていることに目がついた。
アーカイブしておきたい作品でもあるので、これを機に『シングルマン』について少し書いてみたい。
トム・フォードの美学と、その真価も浮かび上がってくるだろう。

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