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グイド・レーニ『ルクレティア』 国立西洋美術館の至宝

寝台に、ひとりの女性が身を起こしている。
上半身は裸。
臙脂色の天蓋の中、眩いばかりの肉の白さを鎮めるかのように、乱れた敷妙(シーツ)が背中と下半身を覆っている。
だが、その柔らかな慰撫を捨て去るためか、嫋(たお)やかに内に曲げた左手は、敷妙をつまんで肩から滑り落とそうとしている。
胸元には嵐の前の静けさが漂い、乳房は慄(おのの)き、固く引き締まっている。
逞しく発達した右腕は、その乳房と腹の前を交叉し、それに続く右手は、寝台に置かれた華奢な短剣の上に重ねられた。
切れ味を試したのか、短剣の刃先はあるかなきかの微かな朱(あけ)に濡れている。
柄頭の金珠と、薬指の金の指輪が響き合う。

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『女中たち』 敗残の中に消えぬ紅蓮(矢崎広・碓井将大・多岐川裕美)

「神聖であろうとなかろうと、この女中たちは怪物である、自分のことをあれこれと夢みるときのわたしたちのように。」(ジャン・ジュネ『女中たち』序文、一羽昌子訳)

1942年、書籍の窃盗で服役中だったジャン・ジュネは、刑務所の中で処女詩篇『死刑囚』を編んだ。
先に出所した囚人仲間の植字工に原稿を託し、自費出版で100部余りを印刷した。
時は第二次世界大戦の真っ只中、パリはドイツ軍占領下にあった。
詩集の紙は、ドイツ軍当局が保管していたものを盗んで使ったと言われている。誤植にまみれ、紙質もばらついた、ひどい出来の詩集だった。市場には、ほとんど出回らなかった。
だが、それを詩人ジャン・コクトーが拾い上げる。

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映画『シングルマン』 トム・フォードの美学

2010年に公開された、トム・フォード初監督映画『シングルマン』を、あらためて観賞した。
何度観ても、ため息しか出ない。
始まりから終わりまで、爪先から頭まで、スクリーンの端から端まで、完璧にスタイリングされている。
近年様々な映画で注目を集めるコリン・ファースは、本作でヴェネチア国際映画祭・最優秀主演男優賞を受賞した。
個人的にも生涯ベスト10に入っている作品なのだが、評価を流し読みすると「ゲイ映画」だの「ストーリーがない」だのといった理由でけなされていることに目がついた。
アーカイブしておきたい作品でもあるので、これを機に『シングルマン』について少し書いてみたい。
トム・フォードの美学と、その真価も浮かび上がってくるだろう。

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